1曲を練習するときは、どれくらいのクオリティを目標に掲げるべきなのでしょうか。その目標は、曲によっても演奏者によっても変わると思います。概ね演奏できたら別の曲に移る方、常に完全な演奏を目指す方、曲によって完成度がバラバラな方、ピアノの先生に考えてもらう方など、色々なパターンが考えられます。
では、どれくらいの完成度を目標として掲げると、ピアノが上達しやすくなるのでしょうか。
100パーセントを目指したくはなりますが……
やはり、誰しも100パーセントを目指したくなるはずです。プロのピアニストのようなクオリティで弾きたいというのが多くの人の本音でしょうが、実際にはなかなか難しいものです。そういったハイクオリティな演奏と比較してしまって、自分の演奏に対して自信が持てなくなっている方も多いと思います。
ですが、そもそもピアニストの演奏と比較するのが間違っています。ピアニストは幼少期から毎日長時間ピアノの練習をしてきたはずですし、そもそも才能にも恵まれているはずです。そんな怪物たちと、趣味の範囲でピアノを弾きたいと考えているご自身の演奏を、そのまま比べても意味はありません。
ですから、ある曲に関して理想となるような演奏に出会った場合でも、そのピアニストの演奏は、自身が目標として掲げたい100パーセントではなく、120パーセントであると捉えるようにしましょう。そうしないと、現実的に考えて無理なことが多いのに、高みを目指すことになってしまうので、本来可能だったはずのこともできなくなってしまう恐れがあります。
ですから、私達がピアノを練習する際は、プロのようなパーフェクトなものを目指してはいけません。自分が精一杯ピアノの練習を頑張れば、なんとか辿り着けるだろうと予想されるリアリティにある目標の演奏が、私達にとっての100パーセントなのです。
80パーセントを目標にしよう
これで、演奏のクオリティについての目標を決めることができるはずです。
ですが、その目標にきちんと到達するのは難しいです。1つの曲で、自分なりに100パーセントのクオリティの演奏に到達しようと頑張っても、そこに辿り着くには多大な時間がかかるはずです。
「この曲ならパーフェクトを目指せるはず」と考えていた楽曲の場合でも、練習していると意外な難所が出てくるなどして、理想の表現ができないようなケースも多いです。このようなことがありますから「プロの演奏を120パーセントだと捉えて、100パーセントを自分は目指す」と思っていても、それも案外難しいのです。
ですから、目標とするクオリティの80パーセントに到達したら、その曲に関しては「合格」としましょう。可能であれば90パーセントくらいを目指したいところですが、それでも難しいので、やはり80パーセントくらいにしておくのが妥当です。
「プロを120パーセントだと捉え、自分なりの100パーセントをイメージする。そして80パーセントに到達したら合格と考える」ということですね。ただし、60~70パーセント程度の完成度で満足するのは自分に甘すぎます。そのレベルで別の曲に移行してしまうと、常に低いクオリティで次に移行してしまうことになるので、ピアノの上達も遅くなってしまいます。
完成度の判断材料
結局は演奏者の主観によって完成度を判断することにはなりますが、とりあえず「ストップしない」「間違えても弾きなおさない」まま、最初から最後まで演奏できるのが「完成度が高い」と言うための最低条件となります。
これはピアノだけでなく音楽では当たり前のことですが、結構難しいことです。ことに、間違えたときにストップさせて弾きなおしてしまうという方はたくさんいます。局所的な練習をする場合は繰り返し弾くことになるでしょうが、通し練習では止まらずに演奏を続けるような習慣を身に付けていかないと、ピアノは上手くなりません。
「通し」として演奏をスタートさせたのであれば、どれだけ間違えても、ラストまで止まらずに、引きなおさずに演奏するように心掛けましょう。