ピアノの寿命については様々な捉え方をする事ができますが、日本産のピアノについては「人間とだいだい一緒」と理解しておくと良いと思います。
日本人は平均80歳くらい生きますが、100歳以上生きる人もいますし、疾患や不摂生などのせいで30~40歳くらいで亡くなってしまう人もいます。ピアノもこれと一緒で「○○年くらい」と断言するのは不可能です。そして、ピアノの場合は人間とは異なり、「オーバーホール」を行えば、若返らせる事が可能です。
定常的に健康診断(調律・点検)をして、不摂生(タッチや音色に過敏過ぎる、劣悪な環境で使う、などでしょうか)を止めて、適切なタイミングでオーバーホールを行うなどしていけば、100年程度は使えてもおかしくありません。
ちなみにバイオリンの寿命の長さは凄まじく、何世紀にも渡って音色が衰えない場合もあるそうです。しかし、ピアノに関しては(よほどパーフェクトなオーバーホールをしない限り)、何世紀も寿命が続くような事はありません。
ピアノの中ではいつも1600~2000kgもの張力が発生していて、ずっと緊張しています。このコンディションが1世紀ほど継続すると、フレーム(鉄骨)が金属疲労に見舞われてしまう可能性があります。かなり良質なフレームであれば、そういった事からは逃れられるかもしれませんが、通常はほぼ避けられません。こういった部分から考えれば「寿命は100年前後」と言えるかもしれません。
また、響板のクラウンが沈んでしまう事が原因で、徐々に音色からハリが失われてしまう可能性も高いです。
そして、ピアノを劣悪な環境(温度が高い、ジメジメしているなど)で使っていたり、先述の通り、タッチや音色などに過敏過ぎたりすると、30年くらいでピアノが寿命を迎えてしまう事もあります。ただ、普通の家庭で楽しむためのピアノに関しては、使う環境に気を付けて、きちんと調律・点検をするだけでも、100年前後使う事ができてもおかしくありません。
調律師の皆さんは、70~100年目かそれ以上のピアノの調律をする場合もありますが、そこまで「生きている」ピアノである時点で「まだまだ弾けるだろうな」と感じるようです。そもそも、きちんと管理していないと70~100年も長持ちする事はありませんからね。
当然、動作や音色が年数によって劣化する事は避けられませんが、古いピアノの外連味のある音色は、新品のピアノでは再現できない魅力であると言えます。
ちなみに、一台のピアノを長い年月使い続けているような方は、そのピアノを深く愛している場合が多いため、「古いから新しいピアノを買おう」などとは全く思わないそうです。
ピアノの寿命は、ピアノに対する愛情に強さに比例するのかもしれませんね。大事なピアノの寿命を伸ばすためにも、ピアノの調律で、人間で言うところの「健康診断」を必ずしていきましょう。そして、ピアノにとって最適な環境を作ってあげる事も大事です。