メトロノームに関しては「初めは遅くしておいて、徐々にテンポを上げていって練習に活かす」と考えている人が大半だと思います。
当然、そのような練習方法もありますので、その捉え方でも間違いではありません。ただ、そういった感じの徐々にペースを上げていくようなメトロノーム練習にはそれほど重点を置かなくても、曲を演奏できるようにはなるものです。では、メトロノームには一体どのような役目があるのでしょうか?
テンポのチェック
最大の役目は、当然テンポのチェックです。曲の最初に「テンポ100」などど記載されているのであれば、それがどの程度のテンポであるのかを掴むために、メトロノームを用います。メトロノームに合わせつつ一回曲の最初の部分だけでも演奏してみれば、テンポを掴むことが出来るはずです。メトロノームの最大の役目はそこにあると考えて良いと思います。
また、ピアニストのCD等で自分が練習中の曲を聴く場合には、メトロノームで大体のテンポを突き止めてみて、「この人は、このパートはおおよそ105程度で演奏しているようだ」と、参考にしてみるのも良いと思います。自分がピアノで弾いてみる場合の、一つの基準にもなるかもしれません。
正しい譜読みのサポートに
メトロノームがあると、正しい譜読みがしやすくなります。初見の曲を譜読みして練習する場合は、しばらくは指定のテンポに比べてスローペースで演奏する場合が多いでしょうが、このタイミングでメトロノーム練習を何回かしておくと、楽譜が示す音符のリズムを正しく理解できているのかチェックすることが可能です。
ことに、連符が出てきた折や曲調が変化した折や曲想が変化した折等に、リズムを狂わせてしまったり、テンポを妙に速めてしまったりして、譜読みを間違えてしまうというのは、中級者以降の場合でもよくあることです。ですから、スローテンポのメトロノームに助けてもらいながら、正しく譜読みを行えているのか否かチェックしていくようにしましょう。
ずっとメトロノームを使うのも良くない
テンポを正しくするために、いつでもメトロノームを使って練習してしまっている方も多いですが、それはそれで良くありません。まず、メトロノームを補助してもらって練習に一所懸命に取り組んで、ズレずに演奏できるようになれば、「テンポ」という意味では完璧になると思います。ただし、音楽は「メトロノーム的なテンポさえ合っていればそれで良い」というものではありません。
音楽にはフレーズが存在し、拍子が存在します。また、フォルテ、クレッシェンド、ピアノ、ディミヌエント等の表情も存在します。曲全体を印象付ける音色も存在しますし、微かなテンポの変化もあるでしょう。
本来は譜読みの時点から、これらに注意して自分なりに考えつつ練習するものですが、メトロノームの補助の下で演奏するような練習ばかり行っていると、数字上は正しいテンポで演奏できていたとしても、曲に表情が生まれませんし、フレーズを無視することになりますし、拍子を軽んじるような妙なテンポになってしまいます。
ですからメトロノーム練習を行うにしても、「最終的な目標は音楽を作り出す」ということを意識した上で取り組むようにしましょう。そのためにも、メトロノームに合わせて演奏することに拘泥するよりは、「テンポのチェック程度」だと捉えておく方が、ちょうど良いメトロノームとの向き合い方になると思います。