「アマデウス」の時代
かの有名なモーツァルトを題材にした「アマデウス」という映画には、ピアノ、ターフェルクラヴィア、チェンバロといった3種の鍵盤楽器が出てきまして、私達はそこから、1700年代の楽器の変遷を感じ取る事ができます。
アマデウスのワンシーンとして、モーツァルトの家から、屋外コンサートに備えて、ピアノを5~6名で運び出す場面があるのですが、今のピアノは300~400kgくらいあるので、この人数では難しいでしょう。この頃のピアノのフレームは木材であり、現在の鉄のフレームよりもかなり軽量だったんです。
鍵盤から瞬時に手を離す必要があった
21歳のモーツァルトは、一流のピアノ製作士だったシュタインの元に出向きます。彼は、シュタインのピアノに備わっていたエスケープの機能に感動します。エスケープとはつまり、「弦の振動を邪魔しないように、打鍵してからのハンマーが即座に元に返り、次の打鍵のために力を逃がす」という機能の事です。
今ではエスケープの機能がないピアノなどほぼ存在しませんが、初期のピアノには備わっていなかった機能です。鍵盤を押さえたままの状態だと、弦とハンマーが触れたままになって、音が消滅してしまうので、初期のピアノをもし今弾くのであれば、必ず即座に鍵盤から指を離して、ハンマーと指を離さなければなりません。
当時のピアニストの動作はかなり忙しいものだったのではないでしょうか。
黒檀・象牙の鍵盤
昔のピアノの鍵盤の白い部分(白鍵)には、象牙が使われる場合が多かったようです。今でも、一級品のピアノには良く採用されていますけどね。
まず、象牙は感触も良いです。そして、高密度なので削ったり切ったりもしやすかったようです。また、汗をきちんと吸ってくれる吸湿力の高さも魅力だったそうです。そして、ピアノの鍵盤の黒い部分(黒鍵)には、黒檀が使われる場合が多かったようです。こちらも、感触が良い事などが魅力だったそうです。