非常にテンポの速い曲や、自分の実力よりちょっと難しい速いテンポの曲を練習することになるケースもあると思います。そのような曲を練習する際にただやみくもに練習しているだけでは、安定して速いテンポで演奏できるようには、なかなかならないと思います。そこで、メトロノームの出番です。
このようなケースではデジタル式のメトロノームを使いましょう。リーズナブルなものなら、1000円程度から購入できるはずです。デジタルタイプならば、微細にテンポを設定することが可能なので、練習の際に便利なのです。ただし、ピアノビギナーの場合や、メトロノームに慣れていない場合は、テンポを目視でチェックできるので、振り子タイプのメトロノームの方が合っているかもしれません。
まず、練習している曲を、一回も間違わずにしっかり表情を付けて、手首にも腕にも無駄な力を込めずに、ゆとりを残したまま演奏できるようにします。当然、非常にスローテンポで構いません。
そこまで到達したら、メトロノームを、そのゆっくりでパーフェクトに演奏できるテンポと一緒くらいに設定します。そして、そのテンポで最初から最後まで演奏してみます。
設定したそのテンポで最初から最後までしっかり弾けるようになったら、メトロノームを1テンポ上げて、また最初から最後まで弾いてみます。アップさせるテンポはあくまで1です。この微調整が、アナログ式のメトロノームでは行えないんです。
別に2テンポくらいまでならアップさせても構いませんが、ここで大事になってくるのは「テンポがアップしたと脳が認識しないように、少しずつアップさせていくこと」です。ですから、一回にアップさせるテンポは2までが限界だと思います。
実際に行ってみると痛感しますが、4テンポくらいアップさせてしまうと、まず間違いなく自分で気付けてしまいます。テンポがアップしたことが分かってしまうと、それまでしっかり弾くことができていたとしても、変な力を込めてしまうなどして、安定感の無い演奏になってしまう可能性が高いです。
1度にアップさせるテンポは多くても2まで。そして、1日単位ではトータルで5テンポ程度までにしておくのが無難です。翌日はそのテンポか、1つダウンさせたテンポから練習を始めて、前の日と同様に徐々にテンポをアップさせていきます。
以上のように、テンポアップを脳に悟らせないように練習を進めていけば、かなりのテンポまで演奏することが可能になる場合もあります。
ただし、自分の実力を大幅に上回るような難度の曲の場合は、この手段を採用しても、演奏できるようにはならない可能性が高いです。実力にあった曲をいっぱい練習して、ピアノを弾くための基礎力を高めることを重視した方が良いと思います。
ゆっくり弾くために使うこともできる
徐々にテンポをアップさせることを目的としたメトロノーム練習とは反対に、ゆっくり演奏することを目的として、メトロノームを用いるのも有効です。
いつもの練習では、譜読みにおいて徐々に演奏できるようになってくると、即座にテンポをアップさせたくなってしまう人も多いです。また、そのつもりがなく「ゆっくり演奏しよう」と考えていても、いつの間にかテンポをアップさせてしまう場合も多々あるはずです。
そうしたケースでもしっかり演奏できることもありますが、「毎回きちんと演奏できる」という段階になる前にテンポをアップさせてしまうと、不安定な仕上がりになってしまう可能性が高いです。
そこで、メトロノームのテンポを遅くして練習するのが有効になってくるのです。メトロノームの音を聴きながらであれば、確実にゆっくり演奏することができるはずです。
メトロノームは「テンポを上げるため」と「テンポを正しくとるため」に使うと考えている人が大勢いるでしょう。しかしそれ以外にも、説明してきましたように、「テンポを上げずにゆっくり練習するため」にも用いることができるのです。中級者くらいになってからは、このような使い方をしたくなるケースも多くなってくるはずです。